SOHO GUILD


 虎ノ門インターネット研究会での
ギルド・カンファレンス
(一部抜粋,95年12月/日本財団)




インターネットにおける信用とは何か

【a氏】 この話を聞いていて気になるのが、僕が今、会社でやっていることにも 関連するんですけれども、うちは資材の調達を図面と現状の仕入値を公開して、これ より安く売ってくれるところは連絡くれということをインターネットで世界に公開し ています。そのときに一番問題になるのが信用なんです。その信用を今、ガンバルと かあの辺にも話を持っていっているんですけれども、信用調査を代行してくれるよう なところがネット上に存在してくれないと、何ら効率化されないというか、それがあ るんですよ。
 これを見ていて、例えば僕がCD−ROMをつくろうと。そのときに絵をかける人 を探したいから、ここに行けばクリエーターがいるかなと探しに行ったときに、こっ ちが求めるクオリティをどうデジタルに表現して、評価してくれて、この人がいいん じゃないですかという場の提供になるのかなというところが、すごく気になるんですよ。
 先ほどの朝日新聞がどうのと、前回の会津さんのときの引き続きになってしまうん ですけれども、朝日新聞が、例えばネット上で情報を公開していたら、おそらく僕は 信じると思うんですよね、そのブランドで。だけど、わけのわからない個人がたまた ま自分の近所にあった大事件をレポートしたとしても、それを信じるかというと、ち ょっとその人の信用がわからない、その人を信用していいかわからないから。

【河西】 今、東京のテレビのMXがそれをやっていますよね。

【a氏】 その辺の信用を付加するような仕組みは、どうネット上で確立していく のかなというのが気になるところですね。

【司会】 一応、ちょっとフォローしておきますと、前回、会津さんとの話があっ て、情報の真偽をどう見分けるんだという話が、途中で立ち消えになったんですが、 それがあったんです。その情報がうそであるというのがどうやってわかるのか、ほん とうであるということをどうやって知るのか。あるいは、うそかほんとうかというの を知る必要があるのかという議論が、若干ですけれども、ありました。それは未消化 のまま流れてしまったという経緯が前回ございます。

【o氏】 それに関連するんですけれども。インターネットとは何も関係ないんで すが、信用という問題でお金を借りられないとおっしゃっていましたね。国民金融公 庫だとか、ここにも出ています商工中金だとか、レベルに応じて国のほうでも銀行で 借りられない人に対して、きちっと経営する人に対してお金を貸すというシステムが あるわけです。金を借りられないというのは、基本的には経営がうまくいっていない わけで、個人でも貸すんですね。だから、そういう人たちの集まりのグループになっ てしまっているようなイメージのところだと……。

【司会】 ちょっと怖いなという……。

【o氏】 まともな仕事をすれば、絶対に利益が上がるし、ニーズもあるし、とい うことですよね。国のシステムが全部だめだと。私もだめな部分もいっぱい感じます 。ただ、今までうまくいってきたわけです、GNPにしても、何にしても世界一で。 気持ちはわからないわけではないけれども、何か偏り過ぎているような感じがして。

【河西】 いや、これはちょっと誤解があるかもしれないんですけれども、お金が 借りられないからどうこうじゃなくて、情報のアクセスがないということを言いたい んです。つまり、こういう言い方がいいと思うんです。行政の窓口で、金融機関に対 してどういう商品が出されているかというと、300種類ぐらいあるんです。区、都 、あるいは第3セクターのベンチャーキャピタル、例えば通産であればVEC、IP Aというのもあります。
 ところが、IPAのこの間のエレクトロニック・コマースの参加実験で、依頼とい うのが情報公開されていないんです。100億円の振り分けが終わった後、朝日新聞 が報道しているんですよ。それまでは報道差しとめがあったのかどうかわからない ですけれども、本来、マルチメディアコンテンツをつくっている団体とか企業に連絡 があってしかるべきなのだけれども、それがされていない状態があるということです。
 金融なんかもそうで、ベンチャーキャピタルに対して投資をしていくのは、当然、 信用がある機関から順番になっていきますから……。

【o氏】 いわゆる、デキレースだと言いたいわけでしょう。

【河西】 まあ、そういう部分も若干あるかなと。それは悪いということではなく て、この業界に関しては、そういう組織を持っていない、ソーホーズは加わっていないんですよ。だから、つくらなきゃいけないというのが1つですね。必ずしも既存の組織をすべて否定しているわけではなくて、新しいマルチメディア時代の組織のあり方はどういうことなのか。これは政治の議論と同じで、無党派層というのは選挙に行かないんだか ら、自分たちの要求をしてもだめじゃないかという議論があるのと同じです。それは おっしゃるように、幾ら頑張っても赤字になるところは赤字になるし、頑張らなくて も利益を上げるところは利益を上げていくし……。

【司会】 eさんは、一応、第3セクターでそこら辺を推進しようという、情報環境整備を推進しようという立場なんで、実際、神奈川でどうかというのを少しフォローしてもらえますか。

【e氏】 結局、組織なんですよね。部門間調整ができないんですよ、ほんとうに 。わかります? 例えば、インターネットをやりましょうという話が一番先にうちに 来ます。じゃ、プレフ神奈川JPでぱっとやりましょうと。そこまではあるんですけ れども、じゃ、コンテンツ。結局、紙の情報、パンフレットでつくっている情報を公 開すればそれでいいんじゃないかみたいなところで、僕もそれに対して提言する力を 持っていないんで、どうしたらいいかということを考えていますけれども、結局、組 織じゃないかなと。
 うちの会社にも県からの出向者が何人か来ていて、それ以外はプロパーなんですけ れども、すごく身近に感じるんですよね、部門間調整が全然できてないと。その辺に 問題があるんじゃないかなと、最近ちょっと気づいてきたような気がします。
 横浜市が今、インターネットにかなり力を入れてやっていると思うんですが、結構 、そういう意味ですごく全体の組織のオーソライズみたいなのがよくできているな、 横浜市を見習ったほうがいいなと思います。県の人は横浜市が嫌いだからで終わって しまうんです。その辺が今の神奈川県は課題かなという気がします。
 インターネットで情報を公開していくということは、いわゆる広報的なことだけじ ゃないと思うんです。例えば、内部の業務もそれで効率化できるとか、そういう提言 をしても、それはあっちの部署に聞いてくれとか、それはうちの仕事じゃないとか、 この予算を消化するのはこういう目的のものなんだからとか、とにかく予算も組織も 硬直しているというのを感じます。


誰も知らない補正予算14兆円の行方

【河西】 さっき、情報の統括という話があったんですけれども、行政が出してい る補正予算、公開コンペ情報を今インターネットで見た場合、多分、ばらばらに見なきゃ出てこないんですよ。今回の補正予算14兆円、いろいろ調べてわかったんですけれども、300ぐらいの補助金がヴェンチャーだけで出ているんです。300というのは、部門別に縦割りで全部振り分けなんで、横の人が何をやっているかわからないんです.
 例えば、ベンチャーキャピタルというのは、通産系、郵政系、中小企業庁、あるいは自治体に最初から振り分けられるものもありますし、第3セクターというものもあります。これは一たん振り分けられるとわからなくて、最終的に2年後の会計検査院の報告で初めてわかるんです。何に使われたかというのが最後にわかってくると。
 ですから、情報把握自体、これは日経の記者の人も、朝日新聞の人も言っていたん ですけれども、わからないんですよ。政治家にも、自民党の人にも聞きましたけれど も、やっぱりわかならい。でもやり方によってはインターネットに新しい政府によるサービス品目が出てきたときに、政府系投資をサーチしたら全部コンテンツが集まる。それが今度はできるんで、そういうメリットはユーザーから言えば非常にあるなと。
 神戸に3年かけて政府系補助情報を集めた人がいて、窓口が15.000件もあったらしい。今、CD-ROMにしています。これではソーホーズに使えるわけがない。大組織のように財務、総務、が分業化していない我々には、そういう意味でもギルドのようなエージェントが必要なんです。
 企業は総務部、人事部というところが、実際に物をつくっていく現場の仕事以外の 部分でメンテンナンスしてくれているわけです。ところが、我々というのはそれがな い。結局、出かけていく暇もない、情報収集する力も持っていない。情報源がどこに あるかわからないんです。市民運動のように時間をかければ、公開法があるわけです から、情報を仕入れることができるわけですけれども、それができない。だから、業 界団体的なものが当然出てくるわけです。
 先ほどおっしゃっていた売り上げのない人たちばっかりが集まるかどうか、それは わからないです。結果どういうふうになっていくか、それは別に目的とは違いますか ら。ユニバーサルサービスである以上、だれでもアクセスできて、情報に対して平等 に、機会均等に接することができるようなプロジェクトプログラムをつくっていこう というのがあくまでも目的なんです。
 我々がもし機関借入みたいなものを検討するんであれば、担保のない人に対してお 金を貸しつけるとかは多分できないでしょうし、国にしても、砂漠に水をやるような ことをするんではなくて、それはもうちょっと改善しなさいよとか、そういう技術を 持っているんだったらこういうことをやったらどうか。それにしても、まずお互い情 報を共有化しないとわからないわけです。

【w氏】 先ほどの信用という部分でいきますと、河西さんに賛同しますのは、今 は組織ほど信用ができないんですよね、どちらかというと。極端な言い方をすると、 金がある、設備があるという組織ほど今は信用がならない。むしろこれからは個人の 信用が非常に大事になってくるわけです。
 例えば、アメリカであればお金を持っているということは信用ではないわけです。 カードを持っていることが信用になるわけです。なぜかというと、もしそこで債権と いう問題が起きれば、カードシステムの中から外されてしまうわけです。VISAが いいのかアメックスがいいのか私はわからないけれども、少なくともそこのメンバー であるということが前提なら、1つの信用にはなるかもしれない。
 ここにある商品についても、だれがつくったかがわからない商品なんです。どこの 会社がつくったということしかわからない。マイナーですけれども、非常に信頼され ているのは、だれがつくった大根だとか、だれがつくったニンジンのほうが信用され ているわけです。そういう点からいくと、やっぱり新しい考え方じゃないかと思いま す。だから、この前も言ったように、旧来の常識論をぶち上げていたら何もできない だろう。それは一遍引っくり返したほうがいいんじゃないか。だったら、いろいろな ことを提案するという提案型がベースにあるんだから、情報の提案型という河西さん のやり方は、大いにやってみたほうがいいんじゃないかなという感じがします。

【河西】 これに関して、政党で一番関心が高いのやっぱり自民党です。自民党はこれ一本だけですぐ大臣クラスのところに回してくれるとか、スピーディですね。時代の先が読めている。(笑)

【h氏】 今のにちょっと関連して質問なんですけれども、情報がすべての国民に 行き渡るべきであるということですよね。特に、弱い人には何らかの方法で情報が満 遍なく行き渡る。多分、それが国民全員の幸せにつながる道だと思うんですけれども 、それに似たのが国民保険の制度ですよね。つまり、国民全員が保険に入っている。 よく新聞にアメリカはそうじゃない。お金のある人は自分たちで保険に入って、入っ ていない人が3,500万人いる。これをどうしようかと言っているわけですね。一方 、日本はみんな保険に入っているんだけれども、今度は国がにっちもさっちもいかな くなったんで、赤字でパンクして、これをどうしようかと言い始めているわけです。 情報について、今、自民党、さきがけとかいろいろ名前が出ましたけれども、結局、 これは国策の問題でしょう。情報がみんなに行き渡るべきだと考えるのかね。


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