SOHOには同世代サラリーマン の1.5倍の収入が必要なのか!


 このタイトルにドキッ!とされた読者は、 SOHOのお置かれた経済状態とライフスタ イルとしての選択に、今も戸惑っている人 かもしれない。後悔先に立たず、とはよく 言ったもので、会社を捨てて颯爽とSOHO になったものの、数年の内に事業所経営 が思ったほど上手く行かないだけでなく、 収入面の不安定さから家族の人生設計まで 変更を余儀なくされるSOHOは少なくない。
 ブームはあくまでブーム。と言ってしま えば、身も蓋もないが「SOHOには同世代 サラリーマンの1.5倍の最低収入を確保す る事業戦略が必要だ」という”SOHOのお きて”は、事実である。
 SOHOとは対極にあった終身雇用制度の 最大の利点は、組織による社会的身分保障 だけではなく、サラリーから天引きされる 社会保険、厚生年金、労組費、住宅購入用 をはじめ、各種の福利厚生費を原資にした 様々な「組織的経済特典」である。
 その中でも最大の特典が、最近では中高 年に思わぬ形で支給されようとしている 退職金だ。いい意味でも悪い意味でもSOHO には、そうした経済特典が弱いわけだから、 必然的に同世代の組織人と比較して収入面 で彼らと同レベルでは、長い人生やってい けるはずがない。急増する金融ビックバー ンのCFでもいっているように、SOHOにも 「引退後の人生設計」があり、場合によっ ては家族の将来への責任も残るのである。
 恐慌前夜ともいえる世界経済の切り札 として、よく日本人の1200兆円規模の 個人資産が云々されるが、あれほど怪 しいものもない。ある調査機関によると 半分近くは引退者の退職金と年金で、残 りはいわゆるSOHO事業者の「家計経済」 と融合した運転資金なのだそうだ。
 つまり住宅ローンや老後のことを考え ると、一部の本当の資産家であるリッチ SOHO(サラリーマンにリッチは少ない、 だから雇われている)を除いて、自由に 流動する個人資産はかなり少ないのが 現実だろう。
 では、我々プアSOHOはどうすればい いのか?
 結論は、ふたつしかない。ひとつは、 従来型の収入を重視した「ビンボーひま なし」SOHOとなり、がむしゃらに働く スタイルを選び、馬の目を抜くSOHO 業界でとにかく従来の150%収益を残す 努力をする。(売り上げではなく収益) それが嫌なら、「ビンボーひま有り」 SOHOとして悠々自適、家族郎党生活費 のかからない田舎に「移住」し、新しい SOHO的価値観を自分自身で創り出す 信念を持つとか...(^_^)
 後者の方が自然な流れなんだろうなと 思う反面、「なんとかならんのかい?」 と気負いたってしまったのが、今から 思うとギルドの事始めでもあったわけです。

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●河西保夫(プランニングプロデューサー・SOHOギルド事務局代表)
「月刊SOHOコンピューティング」98年10月号原稿よ


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